ロートアイアンとは?
ロート・アイアンのスペルはWrought Ironと書きます。
「Wrought」は、今ではあまり使われなくなった「Work」の過去、過去完了形の古い動詞です。
“Wrought Iron”それには、人間が肉体の労働でもって鉄に働きかけ、いろいろな形や品物を力強く造りだして行く
イメージがある、英語には珍しい文学的な表現の言葉です。ちなみにドイツ語ではSchmied Kunstフランス語では
Ferronnerieと言います。この他、フォージュアイアン(ForgeIron)とも言います。またBlackSmithは鉄の手工芸職人、鍛冶屋の意味です。ちなみに銀細工師はSillver Smith金細工師はGoid Smithと呼ばれています。
さて、今日でこそ鉄はわれわれの身の回りの殆んどの物に使われ、工業製品の主流です。
しかし鉄の加工技術は、少し前の時代までは当然のことながらすべて手仕事でしたし、それは遥か人類文明の始まりに
遡る人間の物づくりの原点の技術とでも言うべきもので、このことには鉄が他の金属には見られない特別の性質を
持っていることと大いに関わりがあるのです。
一般に金属の融点は、それぞれ金属の種類により異なりますが、殆んどの金属は融点で瞬間的に融けるものです。
鉄の場合、熱せられ一定の温度に達すると徐々に軟化をはじめ(1000度〜1300度)、やがて融解します。
そこでこの間の温度対で軟らかくなった状態を利用して、鉄を自由に曲げたり、伸ばしたりして形造る技術が
生まれたのです。
これは、実際にはフォージュで熱せられた鉄を金床(アンビル)の上で金鎚(ハンマー)やタガネなどの、
いろいろ工夫された道具や治具を使って加工するのです。
また鉄は熱したものを徐々に冷ますと軟らかい性質を持ち(焼き鈍し)、また水や油に浸して急激に冷ますと硬くなります
(焼入れ)、こうした性質を利用して刃物や機械部品などが造られます。
現代の効率化した製鉄法をはじめ、鉄の高度な加工の工業技術もプリミティブなロート・アイアンの技術と本質的に
何ら変わるものではありません。
鰍謔オ与工房 「ロートアイアン読本」より